夢乃の会計ノートAccounting note
普段の生活上では、あまり馴染みのない「割賦販売」についてまとめる。割賦販売とは、消費者目線でいうと分割払いのこと。
消費者と企業間で直接行う取引であって現在ではカード会社等を挟んで取引を行っているため、実務でもあまり触れることはないようだが、特殊販売取引の基本部分になるので、しっかり理解したい。
まず、割賦販売には、収益認識基準が、「販売基準」「回収基準」「回収期限到来基準」の3種類がある。
意味は、名前のとおり
「販売基準」:商品を販売した時を収益の実現と判断
「回収基準」:代金を回収した時を収益の実現と判断
「回収期限到来基準」:代金の回収期限が到来した時を収益の実現と判断
今回のテーマはあくまでも、『割賦販売の会計処理方法』なので、「販売基準」と「回収基準」を使って会計処理方法をまとめていく。
販売基準では、一般的な商品売買と同様の仕訳をする。
例1)100万円の商品を20万円で分割5回払いで売り上げた場合
(当期割賦販売利益率20%)
仕訳:(割賦売掛金)100万 (割賦売上)100万
販売基準の場合、販売した時点で収益の実現になるため、貸方”割賦売上"借方"割賦売掛金"となる。
例2)上記の商品代金40万円を現金で回収した場合
仕訳:(現金)40万 (割賦売掛金)40万
こちらも一般的な商品売買の仕訳同様、例1の"割賦売掛金"(B/S:資産)が無くなる(=割賦売掛金の回収)という意味で、貸方に"割賦売掛金"となる。ただ、すべて販売基準にしてしまうと、正確な企業の財政状態や期中の経営成績を判断できないという問題点がある。
なぜか
割賦販売(=分割払い)ということは、通常よりも代金をすべて回収するまでの時間が長期間になる。
=その分貸倒れのリスクも高くなる。
貸倒引当金の配慮や収益の認識をより丁寧に、的確にする必要がある。
そこで回収基準・回収期限到来基準の考え方が必要となってくるのだ。
~回収基準・ 回収期限到来基準~
回収基準と回収期限到来基準の会計処理方法は、以下の2種類。
1.「未実現利益整理法」
2.「対照勘定法」
回収基準と回収期限到来基準では、収益の認識のタイミングが異なるのでもちろん仕訳も変わってくる。
前述のとおり今回は、基礎となる回収基準を例に「未実現利益整理法」と「対照勘定法」をまとめていく。
1.未実現利益整理法(回収基準)
販売・回収時は、「販売基準」と同様の仕訳をする。
例1)100万円の商品を20万円で分割5回払いで売り上げた場合
(当期割賦販売利益率20%)
仕訳:(割賦売掛金)100万 (割賦売上)100万
例2)上記の商品代金40万円を現金で回収した場合
仕訳:(現金)40万 (割賦売掛金)40万
ただ決算時には、「回収基準」の場合、回収できていない利益の部分も例1で収益として勘定してしまっているので、未回収分に利益率を掛けて控除する。
決算整理仕訳:(繰延売上利益控除)12万 (繰延売上利益)12万
※前期に繰延売上利益にした分を当期に回収できた場合は、”戻入”として処理する。
例3)100万円の商品を20万円で分割5回払いで売り上げた場合
(当期割賦販売利益率20%)
代金を回収した70万円のうち30万円は前期分、40万円は当期分だった場合
(前期割賦販売利益率30%)
決算整理仕訳:(繰延売上利益) 10万(繰延売上利益戻入)10万
(繰延売上利益控除)12万(繰延売上利益) 12万
2.対照勘定法(回収基準)
次に対照勘定法での会計処理についてまとめていく。
まず、対照勘定法というのは、P/L、B/Sへの反映を目的としているのではなく
取引を忘れないようにすることを目的に仕訳する(=備忘記録)方法のことである。
これまで説明してきた販売基準、未実現利益整理法と違い、販売時には備忘記録として仕訳をする。
また、代金を回収した時に売上として仕訳をする。
例1)100万円の商品を20万円で分割5回払いで売り上げた場合
(当期割賦販売利益率20%)
仕訳:(割賦未収金)100万 (割賦仮売上)100万
例2)上記の商品の代金40万円を現金で回収した場合
仕訳:(現金) 40万 (割賦売上) 40万
(割賦仮売上)40万 (割賦未収金)40万
ここで注意すべきなのが、決算時は、未実現利益分は収益として仕訳されていないので控除する必要はない。
当期の売上原価に未回収分も含まれてしまっては正しい当期純利益が出てこないため、
未回収代金に対する原価分を次期に繰越す。
決算整理仕訳:(繰越割賦商品)48万 (仕入)48万
※前期の未回収分があった場合も同様の考え方で仕訳をする。
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